行って来ます

夫と最後に会って話した日から今日で１年。
最期に交わした言葉はなんだったっけ。

きっと、行って来ますと、気を付けて。

夫が亡くなったのは、
しばらく東京の夫の側で家族全員で過ごすと決めた後、
夜逃げ状態で空けたままの家や畑、
期限の迫った確定申告や報告書の作成、
小学校や保育園の一時転出に関する手続きなど、
色々なことを済ませるために一人島に戻ってきている間のことだった。

もちろん酷く自分を責め後悔した時間もあったけれど、
夫の見送りが終わり
最期まで共に戦って下さった主治医の先生や看護師長さんとお話の時間を頂いた際、
奥さんも最期に伝えたかった言葉などあったのでは・・と心配頂いて、
その時何の迷いもなく出てきた言葉は、
「大丈夫です。全部伝えたし、全部伝えてもらいました。」だった。
あれは私の人生最大の強がりだったような気もするし、
でも、あれから一年、色々考えているけれど、
やっぱり言い残したことなんて一つもないような気がする。
全て伝えたし、夫からも全てもらった。

２人とも、最後まで死ぬ覚悟なんて決めなかった。
私達が決めたのは、生きる覚悟だけだ。
そんな私達らしいお別れだったのかもしれない。


少し前、夢で夫と会った。
夫が「色々落ち着いたらどこかに行きたいね」っていつもみたいに話しているのを
私は横でただ聞いていた。
浅い夢の中で私はそれが夢だということを知っていて、
それなのにそんな日がいつか来るような気がまだしている。